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帆を張るやうに胸を張れ

同性愛者のサラリーマンのblog

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ずつと、ずつと。

翼は俺がゲイだと云ふ事は、会ふ前から知つてゐたのださうだ。
初めて俺を見たのは、共通の友達の写メ。その時はさう気になつた訳ではなく、帰国する時にふと思ひ出して、その友達に会つてみたいと頼んだのださうな。

『ちよつと、薦められないわね、つて言はれた。』

友達の身振りを真似ながら、翼はクスクスと笑つた。それから少し真面目な顔になる。

『あれ、ぜんぶホントの話?』

「あれつて?」

おおよその見当はついてゐたけれど、一応聞いてみる。
翼はボールペンのペン先を出したり引つ込めたりしながらノートを睨んでゐたけれど、俺が手を延ばしてノートの端に触れると、ぴくりと肩を震はせて俯いてしまつた。

はつきり言つて、俺は苛々してゐた。
俺達は恋人同士になつてから3年になる。今更、何を聞きたいのか。

いや、俯いてゐると云ふ事は、聞きたくないと云ふ事ではないのか。

俺は翼の座る椅子の下に座つて、下から翼の顔を覗き込んだ。翼はちらりと俺の顔を見たけれど、直ぐに目を反らしてしまつた。
俺は持久戦を覚悟して、その場に胡座をかいた。かうなつたら、翼の方から何か話すまではこの状態のままだらう。
それに、俺の方から何か言つたら、後ろめたさで逆ギレしてしまひさうだ。

『ゴメンナサイ』

さう書いたページを示して、翼は崩れるやうに椅子から降りた。その身体を受け止めて、膝に座らせる。
顎と両腕で包み込むやうにして抱くと、翼は俺の胸に身体を預けてきた。

またかよ。

俺は唇の内で呟いた。
俺達は、かう云ふ言ひ争ひが本当に多い。俺にとつて、過去は過去に過ぎないけれど、翼にはどうにも悩ましい物らしい。

俺だつて翼の過去の恋愛は気になるさ。つふか、気にならない訳がない。だから、聞かれれば総て答へやうと思つてゐる。別に開き直つたり、露悪的になる訳ではなく、在るがままに真実を話さうと思ふ。

ただ、聞いてどうするのかと思ふ処も有る。
だから、俺は聞かないし、多分、翼もさうなのだらうと思ふ。

俺は翼を膝の上に乗せて、小さな子供をあやすやうに揺すりながら、生え際や耳許にキスをした。ウエストに腕を回して身体を密着させ、手のひらで温めるやうに背中を撫でる。

「翼。」

合はせた胸から振動が伝はつたのか、翼が顔を上げた。

「お前が、好きだ。」

俺の唇に言葉を追つて、翼が頷く。

「俺が、好きか。」

もう一度頷く。
背中に回された指が言葉を綴る。

『ずつとすき』

判らないふりで首を傾げると、翼は恥ずかしさうに笑つた。

















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  1. 彼との事